なぜ、アドラーの『本を読む本』"だけ"では、もう足りないのか? AIと共に「行間を書き」、行動を創造する次世代読書術

Published on October 2, 2025

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読書術の不朽の名著『本を読む本』。しかし、AIが登場した今、その教えだけでは不十分だ。読書は、著者の意図を深く理解する「行間を読む」だけでは終わらない。この記事は、本からの発見を元に、AIと対話し、自分だけの戦略を「行間を書く」ための、次世代の読書術。あなたの読書を「発見」から「創造」へ。


知の巨人との邂逅 ― なぜ今、再び『本を読む本』なのか?

最近、わたしは読書術に関する一冊の古典を再読していました。モーティマー・アドラーの『本を読む本』。多くのビジネスパーソンが一度は手に取ったことがあるであろう、不朽の名著です。

読み進めるうちに、わたしは驚くべき事実に気づきました。自分が長年、試行錯誤の末にたどり着いた読書術の核心部分が、驚くほどアドラーの示す普遍的な原則と一致していたのです。「点検読書」や「分析読書」と呼ばれる彼の技術は、わたしが「30分査定」や「OS/アプリ分類」と呼んでいたものと、目的を同じくする兄弟のような関係でした。

それは、自分がどうやら正しい道を歩んできたらしい、という嬉しい発見でした。

しかし同時に、一つの大きな問いが頭をもたげました。

アドラーがこの本を書いた時代には存在しなかった、二つの圧倒的な変化の波、すなわち「インターネットによる情報の爆発」と「AIの出現」を、我々は経験している。この新しい武器と戦場を前に、我々の読書は、アドラーが示したゴールと同じ場所で止まっていて良いのだろうか、と。

すべての土台は「行間を読む」ことから始まる

結論から言えば、アドラーの教えは今なお、我々が立つべき揺ぎない土台です。『本を読む本』が教えてくれるのは、一冊の本を骨の髄まで理解し、著者と対話し、その思考の真意を深く読み解く技術。いわば、「行間を読む」ための最高の技術です。

例えば、彼が提唱する「解釈の3つのきまり」(①重要な言葉を見つける ②最も重要な文を見つける ③一連の文から論証を見つける)は、本に書かれた情報を、単なる文字の羅列から、構造化されたロジックへと変換するための、驚くほど強力なプロトコルです。

これは、我々が次のステップに進むために、絶対に欠かすことのできない準備運動と言えます。なぜなら、このプロセスは、AIとの対話の質を決定づける、インプットの精度を極限まで高めるための、「弾薬の製造プロセス」に他ならないからです。

「読む」だけでは終われない。AIと共に「行間を書く」新技術

アドラーの教えに敬意を払った上で、しかし、とわたしは考えます。現代のビジネスパーソンにとって、著者の考えを深く理解する「発見者」であることだけでは、もう足りないのではないか、と。

ビジネスの現場で求められるのは、本から得た発見を元に、自分だけの課題に対する、まだ誰も書いていない「解」を創造することです。わたしはこれを「行間を書く」と呼んでいます。

そして、この「行間を書く」という、かつては一部の天才にしかできなかった知的生産を、誰もが実践できるツールが、AIなのです。

AIとの壁打ちは、この「行間を書く」ための、現代に与えられた最高の装置です。

  • 旧来の読書は、本から「教わる」 「発見する」で終わっていました。
  • 次世代の読書術は、本からの発見をAIにぶつけ、「では、自分の場合はどう応用できるか?」という仮説を「創造」し、具体的なアクションプランという名の「行間」を自分の手で書き加えていくのです。

一冊の本から、どうやって事業戦略を生み出すか

これは机上の空論ではありません。わたしがxdecodeの事業戦略を考える上で、実際に行っているプロセスそのものです。

例えば、名著『ストーリーとしての競争戦略』を読んだとします。

ステップ1:弾薬の製造(行間を読む)

まず、アドラーの作法に則り、この本の論理構造を正確に抽出します。「"良い戦略はストーリーを持つ"という命題」や、「"起承転結"という論証」といった、議論の骨格となる「弾薬」を製造します。

ステップ2:仮説の創造(行間を書く)

次に、その弾薬を手に、AIに壁打ち相手になってもらいます。わたしはこう問いかけます。 「この本で語られる"ストーリー"の概念を、我々の新規事業『FactDecode』に適用すると、どのような競争戦略のプロットが描けるか?3つの異なるシナリオを提案してほしい」

この対話を通じて、わたしは本の内容を理解するだけでなく、『ストーリーとしての競争戦略』という偉大な地図の上に、「FactDecode事業のためだけの、まだ誰も描いていない独自の航路」という行間を書き込んでいるのです。

発見者から、創造者へ

『本を読む本』は、あなたを最高の「発見者」にしてくれます。その価値は、永遠に色褪せません。

しかし、我々はもう、発見するだけで満足している時代には生きていません。

アドラーの叡智でインプットの質を極限まで高め、AIとの対話でアウトプットを創造する。その時あなたの読書は、知識を得る行為から、未来を創る行為へと、その姿を劇的に変えるでしょう。