「円高=日本株安、円安=日本株高」は本当? ドル円と日経平均をデータで検証

2026年9月9日公開

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「円高になると日本株は下がり、円安になると上がる」――日本株ではよく語られる見方です。では、ドル円が動いたあと、日経平均は実際にその後5営業日でどう動きやすいのでしょうか。USD/JPYの日次変化と日経平均の5営業日先リターンの関係を、相関やFactor contributionから検証します。

「円高=日本株安、円安=日本株高」は本当か

円安は輸出企業の業績期待などを通じて日本株に追い風と見られやすく、反対に円高は逆風と捉えられやすい――相場解説でも、こうした見方は頻繁に登場します。

ただし、「ドル円と日経平均が同じ日に一緒に動くのか」と、「ドル円が動いたあと、日経平均がどう動くのか」は別の問いです。さらに両者に関係が見えたとしても、それが単に日経平均自身のトレンドを反映しているだけという可能性もあります。

そこで今回は、ドル円の直近1営業日の変化率を表す USD/JPY lag pct change 1 と、その後の日経平均の値動きとの関係を検証します。

見るのは、ドル円が1日で円高・円安のどちらへ動いたあと、日経平均がその後5営業日でどう動きやすかったのかです。

「円高なら必ず株安」「円安なら必ず株高」という因果関係を前提にはしません。過去データ上で、ドル円の短期的な動きと、その後の日経平均にどのような関係が見られるのかを確認します。

日経平均とドル円の関係をどう検証したか

今回の分析対象は 日経平均(Nikkei 225) です。ある営業日を起点として、そこから5営業日先までの日経平均リターンを計算し、その起点となる日付の USD/JPY lag pct change 1 との関係を調べます。

日経平均の「5営業日先リターン」を見る

主な検証期間は5営業日先としました。1営業日だけでは、同じ日に発生したニュースや急な相場変動など短期的なノイズの影響を受けやすくなります。一方、20営業日ほど先まで広げると、その間に経済指標や金融政策、企業決算など別の材料が増え、起点時点のドル円との関係を解釈しにくくなります。

そのため今回は、単に「今日の日経平均と今日のドル円が一緒に動いたか」ではなく、ドル円が直近1営業日で動いたあと、その後5営業日の日経平均はどう動いたのかを見ています。

今回見るのは「ドル円の1営業日変化率」

今回の記事で中心となるFactorは、USD/JPY lag pct change 1 です。

これは、ドル円が直近1営業日でどの程度変化したかを表しています。値がマイナス方向に大きいほど円高方向への動きが大きく、プラス方向に大きいほど円安方向への動きが大きかったことを意味します。

たとえば同じドル円水準にいたとしても、そこへ数週間かけて到達した場合と、直近1日で急速に円安・円高へ動いた場合では、市場の状態は同じとは限りません。今回は、その短期的な変化に焦点を当てます。

さらに、「そもそも日経平均自身が強いトレンドだったために、ドル円が重要に見えているだけではないか」という可能性も確認しました。

日経平均自身の状態を加えても、ドル円の情報は残った

まず確認したのが、Factor Importance / Contribution です。

ドル円と日経平均に関係が見えても、日経平均自身が長期的な上昇トレンドにあり、その局面でたまたま円安も進んでいたのであれば、USD/JPY lag pct change 1 が日経平均自身の状態を代わりに表しているだけという可能性があります。

そこで、約250営業日前との比較や、250日高値・安値からの位置など、日経平均自身の長期的な状態を示すFactorも分析に加えています。

日経平均自身の長期的な状態を表すFactorを加えた分析でも、USD/JPY lag pct change 1の寄与は残った。

「日経平均がもともと強かっただけ」では説明できるのか

分析結果を見ると、日経平均自身の長期トレンドや高値・安値からの位置を加えた後も、USD/JPY lag pct change 1 の寄与は残っています。

これは少なくとも、「日経平均がもともと強い相場だったから、ドル円にも関係があるように見えただけ」という説明だけでは済みにくい結果です。

ただし、Factor Importance / Contributionで寄与が確認できたからといって、USD/JPY lag pct change 1 だけで日経平均を予測できることが証明されたわけではありません。また、ドル円の変化が日経平均を因果的に動かしていることを示すものでもありません。

ここで確認できるのは、日経平均自身の状態を考慮しても、ドル円の1営業日の変化に関する情報が分析上残っているというところまでです。

日経平均とドル円には相関があるのか?

「ドル円と日経平均の相関」はよく語られるテーマですが、今回見ているのは、ドル円の価格と同じ日の日経平均の価格をそのまま比較した相関ではありません。

FactDecodeの Factor-Target Correlation を使い、USD/JPY lag pct change 1 と、その後の日経平均5営業日先リターンとの相関を確認します。

つまり、「今日2つの市場が同じ方向へ動いたか」ではなく、ドル円が直近1日で動いたあと、その後の日経平均にどのような傾向があったかを見ています。

ドル円の1営業日変化率と5営業日先リターンには正の相関が見られた

Factor-Target Correlationでは、USD/JPY lag pct change 1 と日経平均5営業日先リターンとの間に正の相関が確認できます。

USD/JPY lag pct change 1 と、日経平均の5営業日先リターンとのFactor-Target Correlation。ドル円が円安方向へ動いたほど、その後の日経平均リターンが高くなる方向の相関が見られた。

ただし、相関があることと因果関係があることは別です。また、相関係数だけを見て、安定した売買ルールになると判断することもできません。

そこで次に、ドル円の1営業日変化率を実際の大きさごとに分け、その後の日経平均がどうなったのかを確認します。

円高方向に動いた日と、円安方向に動いた日では5日後が違った

USD/JPY lag pct change 1 を10分位に分け、その後の日経平均5営業日先リターンを比較すると、かなり分かりやすい違いが現れました。

最も円高方向への動きが大きかったQ1は、USD/JPYの1日変化率が −3.70%〜−0.71% の範囲です。その後の日経平均の平均5営業日リターンは −0.67%、プラスリターンとなった割合は 44.7% でした。

一方、最も円安方向への動きが大きかったQ10は、1日変化率が +0.69%〜+5.35%。その後の日経平均の平均5営業日リターンは +0.87%、プラスリターンとなった割合は 64.4% でした。

USD/JPY lag pct change 1 を10分位に分け、その後の日経平均5営業日先リターンを比較。円高方向への動きが大きい側では平均リターンが弱く、円安方向への動きが大きい側では強くなる傾向が見られた。

10分位すべてが完全に一直線に並んでいるわけではありません。たとえばQ4の平均リターンは +0.29% なのに対し、Q5は +0.05% で、途中では前後する部分があります。

それでも全体を見ると、円高方向への動きが大きいQ1〜Q3では平均リターンがマイナスとなり、円安方向への動きが大きくなるにつれてプラス側の分位が増えています。

特にQ9では平均リターン +0.57%、プラスリターン率 61.4%、Q10では平均リターン +0.87%、プラスリターン率 64.4% となっています。最も円安方向へ動いたQ10だけが突出しているのではなく、円安方向の上位分位で比較的強い結果が続いています。

今回のデータでは、「円安=株高」という言葉をそのまま証明したわけではありませんが、ドル円の直近1営業日の方向と、その後5営業日の日経平均には無視しにくい関係が見られます。

東京市場が閉じた後もドル円を見る――トレーダーの感覚との整合

日本株を取引していると、東京市場が閉じた後もドル円を確認するのは自然です。夜間に米国金利や経済指標などを受けて為替が大きく動けば、「明日の日本株はどう始まるだろう」と意識することもあります。

今回、USD/JPY lag pct change 1 と、その後の日経平均5営業日先リターンとの関係が比較的明瞭に現れたことは、そうしたトレーダーとしての感覚とも整合的に見えます。

ただし、これは定量的な検証結果とは別の解釈です。日本株トレーダーが東京市場の引け後もドル円を見るという経験則そのものが、今回の分析によって証明されたわけではありません。

データから確認できたことと、そこから市場参加者としてどう読むかは分けて考える必要があります。

ただし「ドル円を見れば日経平均を予測できる」わけではない

今回の結果を読むうえで最も重要な注意点があります。

それは、日経平均とUSD/JPYでは、日足の値が確定する時刻が同じではないことです。

日経平均とドル円では「日足の確定時刻」が違う

日経平均はJPXの現物市場が引けた時点で、その日の値が確定します。一方、FX市場では東京株式市場が閉じた後も取引が続きます。

現在のFactDecodeでは、市場データを基本的に日付を基準にそろえています。それぞれの市場で何時の時点まで利用可能だった情報なのかを、時刻単位でそろえる処理までは行っていません。

そのため、同じ日付で並んでいても、日経平均は東京市場の引け時点の値である一方、USD/JPYの日次値には、その後の為替変動が含まれている可能性があります。

これは今回の USD/JPY lag pct change 1 を読むうえでも重要です。

今回の結果を、「JPXが引けた時点でUSD/JPY lag pct change 1を確認すれば、5営業日後の日経平均を予測できる」という意味に解釈することはできません。同じ日付のUSD/JPYデータに、東京市場の引け後に生じた情報が含まれている可能性があるためです。

今回の分析は、JPX引け時点で利用できる情報だけを使った純粋な予測シグナルの検証ではありません。

それでも、ドル円と日経平均の日次の関係は無視しにくい

日足の確定時刻が違うからといって、今回の分析そのものが意味を失うわけではありません。

東京市場が閉じた後も為替市場では取引が続き、新たな経済情報や金利、金融政策への期待、投資家のリスク選好の変化などが価格へ反映されます。それらを受けてドル円が動き、その情報が翌営業日以降の日本株へ反映されるのであれば、日次データで見たドル円の変化と、その後の日経平均に関係が現れること自体は不自然ではありません。

今回の結果は、JPX引け時点で成立する純粋な先行指標というより、東京市場が閉じた後も動き続ける為替市場と、その後の日本株との日次で見た市場間の関係として捉える方が適切です。

さらに、日経平均自身の長期的な状態を表すFactorを加えても、USD/JPY lag pct change 1 に関する情報は分析上残っています。

したがって、「ドル円と日経平均は関係があるのか」という問いに対しては、単純な「ある/ない」ではなく、日次データ上では比較的明瞭な関係が見える。ただし、それをそのまま予測シグナルや因果関係として扱うことはできないという答えが、今回の分析には最も近いでしょう。

結論:ドル円の1日変化と、その後の日経平均には関係が見える。ただし単純な売買ルールではない

今回、USD/JPY lag pct change 1 と、その後の日経平均5営業日先リターンとの関係を検証しました。

Factor-Target Correlationでは正の相関が確認され、10分位に分けた結果でも、円高方向への動きが大きい側ではその後の日経平均が弱く、円安方向への動きが大きい側では強い傾向が見られました。

最も円高方向への動きが大きかったQ1では、その後5営業日の平均リターンは −0.67%、プラスリターン率は 44.7%。一方、最も円安方向への動きが大きかったQ10では、平均リターンは +0.87%、プラスリターン率は 64.4% でした。

日経平均自身の長期トレンドや250日高値・安値からの位置を示すFactorを加えても、USD/JPY lag pct change 1 に関する情報は残っています。そのため、「日経平均自身がもともと強かったから、たまたまドル円も重要に見えただけ」という説明だけでは済みにくい結果です。

一方で、「円高なら必ず日本株安、円安なら必ず日本株高」という機械的なルールが成立したわけではありません。10分位ごとの結果は完全な単調関係ではなく、相関やFactor Importance / Contributionも因果関係を証明するものではありません。

そして何より、日経平均とUSD/JPYでは日足の価格確定時刻が異なります。今回の結果を、JPX引け時点でそのまま利用できる予測シグナルとして扱うことはできません。

それでも、ドル円が直近1営業日でどちらへ、どの程度動いたのかと、その後の日経平均5営業日の値動きには、過去データ上で比較的明瞭な関係が見える。

今回の分析から言えるのは、そこまでです。